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RAG(検索拡張生成)とは?仕組み・重要性を図解で徹底解説【2025年版】

RAG(検索拡張生成)とは?仕組み・重要性を図解で徹底解説【2025年版】

この記事を読むとRAGの基本原理から応用までがわかり、自社のAI戦略に組み込む判断ができるようになります。

執筆者からひと言

こんにちは。30年以上にわたるITエンジニアとしての現場経験を基に、AIのような複雑なテーマについて「正確な情報を、誰にでも分かりやすく」解説することを信条としています。この記事が、皆さまのビジネスや学習における「次の一歩」のヒントになれば幸いです。

序論:なぜ今、すべてのAI開発者がRAGに注目するのか

大規模言語モデル(LLM)が持つ「嘘をつく(ハルシネーション)」という根本的な弱点を克服し、信頼性の高いAIアプリケーションを構築するための最も現実的な解決策、それがRAG(Retrieval-Augmented Generation)です。

ChatGPTの登場以降、生成AIは驚異的な進化を遂げました。しかし、その万能に見える能力の裏で、LLMは学習データに含まれない最新情報や、社内の機密情報について答えることができず、時にはもっともらしい嘘を生成してしまう「ハルシネーション」という課題を抱えています。

この課題は、AIをビジネスの現場で本格的に活用する上での大きな障壁となっていました。本記事では、この問題を解決する革新的な技術「RAG」について、その基本原理から具体的な仕組み、そしてビジネスへの応用まで、誰にでも分かるように体系的に解説します。

RAG(検索拡張生成)とは?

RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)とは、大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する際に、まず外部の信頼できる情報源から関連データを「検索(Retrieval)」し、その情報を「補強材料(Augmented)」として利用して、より正確で根拠のある回答を「生成(Generation)」する技術です。

従来のLLMは、その内部に記憶された知識だけで応答を生成していました。これは、試験勉強で教科書の内容だけを暗記してテストに挑むようなものです。
一方、RAGは、テスト中に「参考資料の持ち込み」を許可するようなアプローチです。LLMは回答を生成する前に、最新の社内文書や公開されているウェブサイトなど、指定されたデータベースを参照します。

これにより、学習データにはない最新情報に基づいた回答や、「その情報は〇〇という文書の3ページ目に記載されています」といった、根拠を提示することが可能になります。

👨‍🏫 かみ砕きポイント

RAGは「優秀なAIアシスタントに、自社の製品マニュアルや最新の業界ニュースを全部読ませてから、お客様の質問に答えさせる」ようなものです。AIは元々持っている一般的な知識に加えて、手元にある最新かつ正確な資料をカンニングしながら話すので、デタラメを言わなくなり、質問に対して的確な答えを返せるようになります。

RAGが解決する課題:LLMの弱点を克服する

RAGは、特に「ハルシネーション」と「知識の陳腐化」という、LLMが抱える2つの致命的な弱点を解決するために開発されました。これにより、AIのビジネス利用における信頼性が飛躍的に向上します。

LLMのビジネス導入が進まない最大の理由の一つが、その回答の不確実性でした。RAGは、LLMの「創造性」と、データベースの「正確性」を組み合わせることで、この問題を解決します。

ハルシネーション(幻覚)の抑制

LLMは、知らないことでも知っているかのように振る舞い、事実に基づかない情報を生成することがあります。RAGは、回答を生成する前に必ず外部の事実情報(ファクト)を参照するプロセスを挟むため、このハルシネーションを大幅に抑制できます。

知識のカットオフ問題の解決

LLMの知識は、その学習データが収集された時点(知識のカットオフ)で止まっています。そのため、最新の出来事や新しい製品情報については回答できません。RAGは、リアルタイムで更新される外部データベースを参照するため、常に最新の情報に基づいた回答を生成できます。

RAGの仕組み:3つのステップで理解する

RAGの動作は、大きく分けて「検索(Retrieve)」「拡張(Augment)」「生成(Generate)」の3つのステップで構成されています。この一連の流れにより、LLMは外部の知識を活用できるようになります。

ユーザーが質問を入力してから、RAGシステムが回答を返すまでの内部的な動作を、3つのステップに分けて見ていきましょう。

Step 1: 検索 (Retrieve)

ユーザーからの質問(クエリ)を受け取ると、システムはまず、その質問と関連性の高い情報を、事前に用意されたベクトルデータベースなどから検索します。
例えば「製品Aの保証期間は?」という質問が来た場合、製品マニュアルのデータベースから「保証期間」に関する記述が含まれる複数の箇所を、関連度の高い順にリストアップします。

Step 2: 拡張 (Augment)

次に、Step 1で検索してきた情報(コンテキスト)を、元の質問文と組み合わせます。このプロセスを「拡張」と呼びます。元の質問は、「製品Aの保証期間は?」から、「【参考情報:製品マニュアルP.5『保証期間はご購入日から1年間です』】という情報を踏まえて、製品Aの保証期間を教えてください」という、より具体的で情報が豊富なプロンプトに変換されます。

Step 3: 生成 (Generate)

最後に、Step 2で拡張されたプロンプトをLLMに渡します。LLMは、与えられた参考情報に基づいて、最終的な回答を生成します。このときLLMは、自身の内部知識ではなく、提供されたコンテキストを最優先するため、「製品Aの保証期間は1年間です。」という、正確で根拠のある回答を生成することができます。

Key Takeaways(持ち帰りポイント)

  • RAGは、LLMの「嘘をつく」「情報が古い」という弱点を克服する技術。
  • 「検索」「拡張」「生成」の3ステップで、外部の正確な情報に基づいた回答を作る。
  • ビジネスでAIを活用する際の「信頼性」を担保する、最も重要な技術の一つ。

RAG vs ファインチューニング:何が違うのか?

RAGとファインチューニングは、どちらもLLMの性能を向上させる手法ですが、その目的とアプローチが根本的に異なります。RAGは「知識の注入」、ファインチューニングは「スキルの訓練」と理解すると分かりやすいでしょう。

両者は対立するものではなく、目的応じて使い分けたり、組み合わせたりすることが可能です。それぞれの特徴を理解し、適切な手法を選択することが重要です。

RAGとファインチューニングの比較
比較項目 RAG(検索拡張生成) ファインチューニング
目的 外部の最新・正確な知識を回答に反映させる 特定のスタイル、口調、タスク遂行能力をLLMに学習させる
たとえ 参考書持ち込み可のテスト(知識の外部参照) 特定分野の集中特訓(能力の内部化)
コスト 比較的低コストで導入可能 大量の教師データと計算リソースが必要で高コスト
情報の更新 データベースを更新するだけで容易 知識を更新するには再学習が必要で困難

より詳細な技術的比較や、ビジネス要件に応じた使い分けのシナリオについては、以下の専門記事で深く解説しています。

まとめ:RAGはAIのビジネス活用を加速させる鍵

RAGは、LLMの創造性とデータベースの信頼性を融合させ、AIを「面白いおもちゃ」から「信頼できるビジネスパートナー」へと昇華させるための、現在最も効果的な技術です。この技術を理解し、活用することが、今後のAI戦略の成否を分けると言っても過言ではありません。

本記事では、RAGの基本的な概念から仕組み、そしてファインチューニングとの違いまでを解説しました。RAGは単なる技術トレンドではなく、企業の知識資産を最大限に活用し、顧客対応の自動化、社内ナレッジ検索の高度化、
そして新たなAIサービスの創出を実現するための、強力なエンジンとなります。まずは、自社のどの業務にRAGを適用できるか、検討を始めてみてはいかがでしょうか。

専門用語まとめ

RAG(検索拡張生成)
LLMが外部データベースを検索し、その情報に基づいて回答を生成する技術。AIの回答の正確性と信頼性を向上させる。
大規模言語モデル(LLM)
膨大なテキストデータで訓練されたAIモデル。人間のような自然な文章の生成を得意とするが、情報の正確性に課題がある。
ハルシネーション(幻覚)
AIが事実に基づかない、もっともらしい嘘の情報を生成してしまう現象。LLMのビジネス利用における主要な課題の一つ。
ベクトルデータベース
テキストや画像などのデータを「ベクトル」という数値の羅列に変換して格納するデータベース。意味の近さに応じて情報を高速に検索できる。
ファインチューニング
既存の学習済みLLMに対して、特定のタスクや文体に関する追加の教師データを与えて再学習させ、モデルの挙動を調整する手法。

よくある質問(FAQ)

Q1. RAGを導入するには専門的な知識が必要ですか?

A1. 基本的なシステムであれば、LangChainのようなフレームワークやクラウドサービス(Vertex AIなど)を利用することで、比較的容易に構築できます。しかし、検索精度のチューニングや大規模な運用には、ベクトルデータベースや自然言語処理に関する専門知識が求められる場合があります。

Q2. RAGとファインチューニングは、どちらが優れていますか?

A2. 優劣はありません。目的が異なります。最新情報や社内文書に基づいた正確な回答が欲しい場合はRAGが適しており、AIに特定の役割(例:フレンドリーな接客チャットボット)を演じさせたい場合はファインチューニングが有効です。両者を組み合わせることもあります。

Q3. RAGで参照するデータはどのような形式が良いですか?

A3. テキストデータが基本となり、PDF、Word、HTML、CSVなど様々な形式に対応可能です。データを適切に前処理し、意味のある単位(チャンク)に分割してベクトル化することが、検索精度を高める上で非常に重要になります。

更新履歴

  • テンプレートv5.0に基づき全面リライト、ピラー記事として再構成
  • 初版公開

主な参考サイト

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ABOUT ME
ケニー 狩野
AI開発に10年以上従事し、現在は株式会社アープ取締役として企業のAI導入を支援。特にディープラーニングやRAG(Retrieval-Augmented Generation)といった最先端技術を用いたシステム開発を手掛ける。 一般社団法人Society 5.0振興協会ではAI社会実装推進委員長として、AI技術の普及と社会への適応を推進している。中小企業診断士、PMP。著書に『リアル・イノベーション・マインド』。